マニア向け商材の細分化したニーズにレコメンドで対応
サイト名 | 同人誌・マンガ・アニメのとらのあな
URL | https://ecs.toranoana.jp/tora/ec/
株式会社虎の穴は、同人誌を始めアニメやキャラクターグッズ、玩具を店舗、ECサイトで販売している。
1994年に1号店を開店、1996年に通信販売部を設立し、メールでの通信販売を開始した。その後開設したECサイトが現在、主力の販売チャネルとなっている。
同人誌といういわゆるマニア向けの商材を扱う同社は、細分化した顧客ニーズに対しECサイト上でどのように対応しているのだろうか。
同社のシステム開発を一手に担う「虎の穴ラボ株式会社」のエンジニアリングマネージャー松尾陽祐様、小西正剛様、大場祥哉様にお話を伺った。
オフラインイベントが苦戦する中、オンラインイベントが好評
――御社は主に同人誌や同人グッズなどのユニークな商材を扱っていますが、ECサイトで工夫されているポイントはありますか?
同人誌は数多くの作家さんが出版されているので、非常に作品の種類が多いのですが、一度在庫がなくなってしまうと、サークル様にて再版をされない限りは補充することができないという特徴があります。
通常のECサイトであれば売れ筋の商品を全面に出しておき、売れたら補充する、ということができるのですが、同人誌の場合はそれができません。
したがって、とにかくお客様に色々な作品を見ていただけるようなサイトづくりを常に意識しています。
――昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、多くのEC事業者の動向に影響を及ぼしていますが、御社ではいかがでしょうか?
影響は大きく2つありました。
1つ目は、ECサイトの利用者が増えたことです。
以前は、仕事帰りに店舗に寄って同人誌を購入されるお客様が多かったのですが、仕事がリモートワークになり、外出する機会が減った結果、ECサイトで購入いただく方が増えているのかと思います。
2つ目は、オフラインイベントが開催できなくなったことによる影響です。
男性向け同人誌では、イベントの開催に合わせて同人誌を作成する作家さんが多くいらっしゃいます。
しかし、イベント自体がなくなってしまったことで、生まれる作品数が減り、当社のECサイトで扱う作品数も減ってしまいました。
そうした現状を受け、最近はオンラインでのイベント「とらのあなWEBオンリー」の開催に力を入れています。
オフラインイベントと同等まではいきませんが、同人サークルの特設ページを作り、作家さんとお客様がコミュニケーションを取れるような仕組みを提供しています。
――評判はいかがでしたか?
人気ジャンルのイベント時には一時サイトがダウンするほどアクセスが集中することがあったのが衝撃的でした。
エンジニアとしてはサイトの復旧作業やその後の負荷軽減開発など、苦労したポイントが多かったのですが、とにかく好評だったのは間違いないかと思います。
お客様の潜在的なニーズに応えることができる
――お客様のニーズが細分化しがちな商材かと思いますが、その中でレコメンドはどのような役割を担っているのでしょうか?
レコメンドによって、お客様の潜在的なニーズに応えることができると思っています。
当社のお客様は、自分の好きな作品やキャラクターを検索してピンポイントで目当ての作品を購入される傾向にあります。
そのようなお客様が、自分の趣味・嗜好に合う、「この作品も楽しめそう」と思える作品やキャラクター・ジャンルの作品にたどり着くには、レコメンドが必要不可欠と考えています。
もう1つはオフラインイベントが持つ「偶然の出会い」という要素をもたらすことができるのではないかと考えています。
オフラインイベントは1つの大きな会場で開催されることが多いので、会場を歩いていると、もともと目当ての作品でなかったものでも、「ちょっと面白そう」や「表紙がかわいいな」といった感じで、気になる作品が偶然目に入り、購入につながることがあります。
このように、もともと目的になかったものに偶然出会える体験を提供するという点においても、レコメンドに非常に価値を感じています。
――活用方法を拝見すると、作品詳細ページでは閲覧履歴を元にレコメンドを表示するのが一般的ですが、御社の場合は購入履歴を元にレコメンドを表示されているなど、各所に工夫が見られます。意図などがあれば教えて下さい。
その方が購入の確度が高いと考えているからです。
同人誌を紹介する際の難しいポイントとして、同じジャンルの作品であっても趣味には合わない、ということがよくあります。
例えば、女性向けの同人誌では、キャラクターのカップリングの順序が逆になると自分の趣味に合わず、仮に閲覧したとしてもすぐに離脱してしまうというお客様が多くいらっしゃいます。
そんな中、閲覧履歴を元にしたレコメンドを表示してしまうと、趣味に合わない作品をお客様におすすめする可能性が高まります。
一方で、購入履歴を元にしたレコメンドであれば、最終的に一緒に購入されているもの、つまり趣味に合うものが表示されるので、購入される可能性が高いのではないかと考えています。
当初、当社のお客様は目当ての1点だけを狙って購入するお客様が多いと思っていたのですが、実際は平均購入数が2点以上という結果が出ており、レコメンドを経由し、あわせ買いに至ったお客様も多いのではないかと考えています。
――トップページでは閲覧履歴を表示されています。
当社のデータベースに登録されている作品数は数百万点に上ります。注文数も非常に多いため、膨大な量のデータを扱わなければならず、データベースへのアクセスには大きな負荷がかかります。
閲覧履歴をデータベースから取得することもできるのですが、そのアクセスにかかる負荷や実装コストを考慮し、当社のデータベースとは独立してアクセス、動作が可能なNaviPlusレコメンドの閲覧履歴を表示する機能を利用しています。
――導入後のサポートについてはいかがでしょうか?
問題が発生した時も、その原因の特定から解決策の提示までサポートしてもらうことができ、非常に助かります。
ある時、特定の作品のデータを読み込めないという問題があり、結局、当社のデータの文字コードと、NaviPlusレコメンドが読み込み可能な文字コードとの差異があることが原因だったのですが、その際も原因の特定から解決までサポートしてもらったということがありました。
また、問題が起きた場合の対応だけではなく、当社でうまく使いこなせていない機能についての活用方法なども教えてもらったりしています。
ECサイト全体のパーソナライズ化を目指す
――今後強化していきたいポイントはありますか?ECサイトのパーソナライズ化に力を入れていきたいです。
当社の商材を同人作品、マニア向け作品と一括りにするのは簡単ですが、実際はお客様の趣・嗜好は非常に細分化しています。
したがって、作品ページに限らず、トップページや検索結果ページなどにおいても、お客様一人ひとりにマッチした情報を提供できるような仕組み作りや施策を進めていきたいと考えています。