ノウハウ 2015.02.25
EC事業者が取り組むべきUTOとは【対談レポート後編】

EC事業者が取り組むべきUTOとは【対談レポート後編】

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前回に引き続き、「EC事業者が取り組むべき課題とは何なのか?」をテーマに、アクセス解析コンサルティング事業を展開する株式会社プリンシプルの副社長/WEB解析事業部長の木田氏と、弊社の執行役員/セールス&マーケティング部長の高橋との対談をお届けします。

前回はEC市場を取り巻く環境の変化と、いかに本質的に課題に取り組むか、という点についてご紹介しました。後編となる今回は、その課題解決のためのKPIや、ユーザスループット最適化(UTO)が課題の特定に有用である点などをご紹介します。

本質的な課題解決を行うために最適なKPI

高橋:
「スループット」は、IT・ネットワーク領域の用語で「ネットワークの単位時間あたりの処理能力」という意味です。これをECサイトに当てはめて、「ECサイトの処理能力/販売力」と定義し、ユーザが流入した後のECサイトのパフォーマンスを最適化していくことを「ユーザスループット最適化(UTO)」とナビプラスでは言っています。

「ユーザスループット最適化(UTO)」の考え方は、別段複雑なことや目新しいことを言っているわけではなく、集客効果を最大化するために、バケツに入れる水(流入)を増やす前にバケツの穴(離脱の原因)を塞ぎましょうということ。そのために、「顧客体験」を追求していきましょうということですし、もっと具体的に言うと、サイトのコンテンツとナビゲーションを継続的に改善していきましょうということです。

木田:
アクセス解析の領域では昨年一つの大きな変化がありました。この変化は、「ユーザスループット最適化(UTO)」の考え方にとって追い風になると思います。
先ほど少し触れたユニバーサル・アナリティクスの拡張eコマース機能ですが、今まで見ることのできなかった「商品詳細ページ到達率」と「カート投入率」を見ることができるようになりました。

これまでは、カートに商品が入って決済が起こるまでのプロセスは見ることができていて、これを「ファネル」と呼んでいまし た。それが、拡張eコマース機能の登場で、訪問→商品詳細ページ→カート投入→決済の一連のプロセス――私はそれを「ビッグファネル」と呼んでいます――これが可視化できるようになりました。このビッグファネルを見ることができるようになったことで 、いわゆる“おもてなし”や“接客”における問題点を明確に認識できるようになると考えています。

ユニバーサルアナリティクス画面
ユニバーサルアナリティクス画面

 
「いかに多くの商品を見てもらって、いかに多くの商品をカートに入れてもらうか」というのは、当たり前の話であって難しい話ではありません。でも多くのEC事業者は気にしていなかったことでもあります。それは、今までのGoogleアナリティクスを初めとしたアクセス解析ツールでは見ることができなかったからというのが大きな理由だと思います。そういう意味で、「商品詳細ページ到達率」と「カート投入率」がユニバーサル・アナリティクスで見られるようになったというのは画期的なことですね。

高橋:
今までの「カート→購入率」というKPIでは、コンバージョンに近すぎて打てる施策が限られていました。
一方で、「UU」や「PV」などのKPIでは、コンバージョンから離れすぎていて、具体的で効果的な施策を検討するためにはあまり役に立ちませんでした。
そのような背景がある中で、「商品詳細ページ到達率」と「カート投入率」がユニバーサル・アナリティクスで見られるようになり、流入後のサイト内のボトルネックが可視化できるようになったことで、まさにユーザスループット最適化(UTO)を推進するための環境は整いつつあるわけですね。

課題の特定を行うことがユーザスループット最適化(UTO)のはじめの一歩

木田:
例えば、今まで順調に売れていたドリップコーヒーのパックが急に売れなくなった。なぜ売れなくなったのだろう?と、今まではすぐに原因特定ができなかったんですね。それが、アクセス解析の環境を整えて適切なKPIを設定することで、例えば、このドリップコーヒーの商品名での検索数が減ったんですとか、検索数は同じだけど離脱率が多くなってしまって商品詳細ページにそもそも到達する数が減ったんですとか。今まで、ドリップコーヒーの商品詳細ページに送客できていたランディングページの構成が変わって、Googleの検索順位が変動して新規流入が減ったんですとか。商品詳細ページの構成を変えた結果カートボタンの視認性が悪くなり、カート投入率が下がったんですとか。
結果として、今まで分からなかったドリップコーヒーが売れなくなった理由を逐一説明できるようになるわけです。

ドリップコーヒーの話を例えに出した後に、御社でも同じように売れていた商品が急に売れなくなることってありませんか?と聞いてみる。その原因を把握していますか? 原因を知りたくないですか? それって、「商品詳細ページ到達率」と「カート投入率」に着目すると分かるんですよ、と言うとだいたい興味を持っていただけます。

UTO概念図

UTO概念図

高橋:
ところで、ECサイトの「商品詳細ページ到達率」って、平均ではどのくらいなのでしょうか?

木田:
いろんなECサイトを見てきましたが、全体PVの5〜6割くらいしか商品詳細に到達していないです。商品を見てもらえないと売上に繋がらないECの特性を考えると、実に4〜5割は「売上に直結しないPV」になっていると言えます。
サイトに100訪問があったとして、60訪問くらいしか商品詳細ページに到達していないということは、そこに大きなロスがあるかもしれないと考えるのはすごくまともな感覚だと思います。商品詳細ページ到達率が6割から8割に上がったら、それは間違いなく売上は上がりますよ。

高橋:
ナビプラスとしてレコメンドエンジンやサイト内検索エンジンを提供する中で、今までは「ユーザの回遊性を高めて、PV/UUを上げていきましょう」と提案してきましたが、木田さんの話を伺っていると、厳密には「PV/UU」ではなく、「商品詳細ページPV/UU」が設定すべきKPIであると気づかされます。

商品詳細ページに到達してもらうための機会としては、サイト内検索が重要な位置を占めることは間違いないのですが、このサ イト内検索を十分にチューニングしているECサイトはほんとに一握りしかいません。サイト内検索を利用するユーザは、サイト内検索を利用しないユーザに比べて4〜5倍のコンバージョン率がある。にも関わらず、サイト内検索を使いやすくするためのナビゲーションと検索精度の複数の課題が放置されているのが実情です。

ユーザスループット最適化(UTO)成功に欠かせない「文化」の醸成

木田:
さらに一步進めて、商品詳細ページに到達したユーザに、1つではなく複数の商品詳細ページを見てもらうという観点では、レコメンドエンジンもど真ん中の施策ですね。
例えば、商品詳細ページを2ページしか見ていない人、3ページ以下の人はコンバージョン率が0.05%で、10ページ見ると1%まで跳ね上がる、つまりコンバージョン率が20倍に跳ね上がるということが可視化されると、そのECサイトの弱点・欠点・課題というのは、商品詳細ページをたくさん見てくれないこと、ということになります。
そうなると、いきなりレコメンド入れましょう、ではなく、あなたのサイトの課題は商品詳細ページを少ししか見てもらえてないことだから、それを解決するためにレコメンドを入れましょうと、施策実施の理由付けが明確になってきます。

高橋:
今までユーザスループット最適化(UTO)を実行できないままだった原因は大きく分けると3つあると考えています。
一つ目は、集客偏重の予算配分。
先ほどの木田さんの「高度成長」の話がありましたが、まだ多くのECサイトは「外部施策(流入前の最適化)」に目が向いていて、集客に多くの予算を割き、本来はユーザスループット最適化(UTO)に振り向けるべき予算を用意できていないのが実情だと感じます。
二つ目は、レコメンドエンジンやサイト内検索エンジンを導入して終わりになっていること。
チューニングすることで、売上を上げられる“マーケティングツール”であるにも関わらず、サイトリニューアル時に実装して、それで終わりになってしまっています。
三つ目は、適切なパートナーを選べていないこと。
広告代理店は、語弊を恐れずに言うと、流入後の「内部施策」のサポートをすればするほど、短期的には事業収益性が悪化するビジネスモデルです。だから、なんとか集客に限定してパフォーマンスをいかに上げるかを考えて提案するので、結果としてユーザスループット最適化(UTO)の視点は欠落してしまうのでしょう。

木田:
ユーザスループット最適化(UTO)を成功させるには、極論すると、本質を見極めて改善を継続できる「企業文化」をつくることが必要ですが、おそらくそう簡単には「企業文化」は変わらないでしょう。「企業文化」まではいかないけど、「可視化文化」というか「テスト文化」のようなものを醸成する支援はクライアントに提供したいと思いますね。
今はデータにもとづいて担当者の「課題と伸びしろ」の把握をしてもらうと同時に、その課題に対する対案もセットで「こういうソリューションがあるんですよ」とアドバイスしています。予算さえ取っていただければ、トータルでサポートします、というところまでは準備できていますから。

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