ノウハウ 2015.02.04
EC事業者が取り組むべきUTOとは【対談レポート前編】

EC事業者が取り組むべきUTOとは【対談レポート前編】

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年率で17%を超える市場拡大が続く一方で、EC事業者間の競争は激化し、優勝劣敗が鮮明になりつつあるBtoC-EC市場。その市場で生き残るために、 「EC事業者が取り組むべき課題とは何なのか?」をテーマに、アクセス解析コンサルティング事業を展開する株式会社プリンシプルの副社長/WEB解析事業部長の木田氏と、弊社の執行役員/セールス&マーケティング部長の高橋が対談を行いました。

成長率10%でも「成長している」とは言えない事実

高橋:
2014年8月に発表された「電子商取引に関する市場調査(経済産業省)」によると、2013年における日本国内のEC市場(BtoC)は、前年比17.4%増の11.2兆円に達しています。市場全体が急拡大する一方で、売上上位のEC事業者の成長率を見ても17.4%を超えているところはそんなに多くないという点を考えると、みんな仲良く成長して市場を押し上げているというよりは、一部の勝ち組企業が市場を牽引していると見るのが妥当でしょうね。

木田:
公表されている売上や成長率を見ても明らかですが、「Amazon一人勝ち」の構図は疑わざる事実でしょうね。また、私自身一ユーザの観点でもAmazonで買い物する比率が高くなってきています。Amazonだと何を買っても間違いがない、顧客体験が保証されている感じがして、価格から品質から配送/返品まで、すべて何も心配いらない。
ちょっとやそっと安いくらいでは、Amazon以外で購入する気になれないと感じています。

高橋:
「あっ欲しい」と思ってAmazonのアプリを立ち上げて検索してカートに入れて購入するまでが、極端な話、息を止めながら完結するスピード感に慣れてしまうと、確かに他では買えなくなります。

木田:
Amazonは、既に多くのユーザをそんな環境に慣れさせ、リピーター化させてしまっている上で、更に「カートに入れる」ボタンなどのA/Bテストを常にやっています。トップランナーであるAmazonが最高のチューニングをしていて、フォロワーがそこそこの改善しかやっていないのであれば勝てるわけがありません。

高橋:
市場の成長率と各社の成長率を比較してみれば分かりますが、年率10%の成長だとしても相対的には「成長している」とは言えません。トップランナーのAmazonは、市場の成長率を超える20%で、まさに「成長」しているんですよね。

成長のパラダイムは確実に変わって来ている

高橋:
月刊ネット販売2014年10月号に掲載されている調査結果で、「ネット販売における課題は?」という質問に対して、EC事業者が答えたダントツ1位は「新規顧客開拓」でした。前年度調査に続いて2年連続で1位、更に前年より2位との差が広がったとのことです。

ネット販売の課題

※クリックで拡大します

木田:
インターネット業界のここ10年を振返ると、どんどんユーザは増えていたから、増えていくユーザをどんどん取りに行けば良かったんです。サイト運営上の課題は 「外部施策(流入前の最適化)」「内部施策(流入後の最適化)」の二つに大きく分けられますが、そんな10年の時代背景があるから、どうしても「外部施策」に目が向きやすかったのでしょうね。
私は長くGoogleアナリティクス(以下「GA」)を見ていますが、GAもそうした時代背景のせいか、歴史的には外部施策、つまり、集客系のレポートが充実していました。昨年6月に正式リリースされたユニバーサル・アナリティクスの拡張eコマース機能で、かなり内部施策の効果測定も強化されてきましたが……

高橋:
客観的に複数の顧客の状況を見て、更に外部施策としての「集客」のパフォーマンスが上げられそうかどうかで言うと、かなり頭打ちの状況なのではないかと思うんです。「集客」のパフォーマンスを劇的に改善する施策は既にやりきってしまっていて、後は本当に乾いた雑巾から一滴の水を絞り出すのと同様の努力をしているような。
多くのEC事業者が課題の1位に上げる「新規顧客開拓」の本音が、実は“いかに更に集客するか”ではなく、“いかに集客以外の有効な手段を見つけるか”という観点で試行錯誤しているということであれば、まだ健全だと思いますけどね。

木田:
そうですね。ユーザが来てないから売れないだけで、今100人来ているのが200人になれば売上100万が200万になるよ、と未だに思っているEC事業者が多いのでしょうね。でも、実際に集客してみると、もうお金をかけないと増えないわけです。お金が湯水のようにあって、リスティング広告にもSEOにも大きな投資ができるのであれば別ですけど、現実には難しいですよね。
今までどんどんユーザが増えていた環境は、言うなれば「高度成長期」に起きていたことであって、EC事業者はそのパラダイムは既に変わりつつあることに早く気づく必要があると思います。高度成長のパラダイムをいつまでも引きずって、「新規顧客!新規顧客!」と唱えても、本質的な課題解決には繋がりません。

高橋:
ヨドバシカメラって、絶対的にも相対的にもこの1年で売上を急拡大させたんですよね。
Amazon、千趣会に次ぐ売上3位に位置するヨドバシカメラですが、この1年で40%超の成長をしているそうです。書籍をはじめ、文具や日用品、飲料品、化粧品など、取扱い商材を増やしたことが成長の主因と見られていますが、サイトの作りが非常に興味深い。Amazonにそっくりのページデザインなんです。

Amazonトップ

Amazonトップページ

ヨドバシTOP

ヨドバシ.comトップページ

木田:
単純に「そのままAmazonの真似をしろ」というわけではなく、Amazonの「顧客体験」がもたらしている要素は何かを見極めて、できるところから参考にしていくのは非常に有効だと思います。
これからは「内部施策」、いわゆる“おもてなし”とか“接客”と言われてる領域を最適化して、トータルな顧客体験を具現化していくことこそ、EC事業者が目指すべき方向性でしょう。

高橋:
ヨドバシカメラが好調な一方で、価格コムからの流入に依存してきたネット専業の家電量販店は、軒並み業績が苦しくなっているようです。商品を安く仕入れられる独自ルートを確保して、店舗を持たない「倉庫+EC」だけの効率運営を行い、「安さ」で差別化を図って来たネット専業各社に対して、今やAmazonや大手量販店も同等の安さで勝負できるようになってきています。
もはや「安さ」による一点突破の勝負では太刀打ちできないのでしょう。街の電気屋さんではないですが、ネット専業の家電量販店にとっても、いかに「顧客体験」を追求するかが差別化のポイントになってくるのだと思います。

いかに本質的な課題解決に取り組むか

高橋:
EC事業者を取り巻くトレンドの変遷は、本当に目まぐるしいですよね。「O2O」「オムニチャネル」「マーケティングオートメーション」「コンテンツマーケティング」「DMPの活用」などなど。でも、これらのトレンドってソリューションを提供するITベンダーが仕立てたバズワードであって、多くのEC事業者にとって本質的なソリューションになっているかどうかで言うと、かなり疑問に感じます。もちろん、一定の効果はあるのでしょうが、それなりのコストと人員と準備期間をおかないと成功しません。

あと、「オムニチャネル」「マーケティングオートメーション」「コンテンツマーケティング」って横文字でかっこ良くて賢そうなんだけど、実はやっていることはそんなたいしたことなくて、結局今までやって来たことを可視化して再構築しただけ。「オムニチャネル」で取り上げられる先進的な事例も、それで売上が上がったというよりは、「他社にはできないこんな仕組みを作りましたよ、すごいでしょ!」と言っているのが2014年の段階で、本質的な解決策になっているかどうかで言うと、おそらくそうではないと思います。

木田:
オムニチャネルの分析については、技術が最初に成立したけれど、その成功事例というかノウハウ、応用、実装例という意味でのアプリケーションがまだ揃っていない段階なんでしょうね。もちろん、先陣きって、このアプリケーションを充実させることで、成功する事業者が今後出てくることは間違いないとは思いますが……。全てのEC事業者が取りうる、また、取るべき戦略ということでもありません。まずは今、サイトに訪問してくれるお客様により良い体験をしてもらい、コンバージョン率を高める、といった本質的で即効性のある現実的な施策、すなわち「内部施策」から手をつけていきましょう、というのが我々の主張したいことですね。

高橋:
はい、その通りです。ナビプラスでは、2014年になってから「ユーザスループット最適化(UTO)」というキーワードを使い始めていますが、考え方はまさに「内部施策」を最適化していきましょうということです。
流入前の「外部施策」の改善余地があまりないということであれば、流入後、つまりユーザが検索して、商品詳細ページを閲覧して、商品を比較して、カートに入れて、購入するという一連のプロセスを最適化していく、 ユーザのスループット(サイトの処理能力/販売力)を最適化していくことこそが本質的な課題解決のアプローチであり、多くのEC事業者が取り組むべき施策だと考えています。

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