ノウハウ 2014.08.08
バイラル・マーケティングの好事例!『GILT』アレクシス・メイバンク、アレクサンドラ・ウィルキス・ウィルソン【ブックレビュー002】

バイラル・マーケティングの好事例!『GILT』アレクシス・メイバンク、アレクサンドラ・ウィルキス・ウィルソン【ブックレビュー002】

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こんにちは!マーケティンググループのツツイです!

今回は、先日ご紹介した「EC運用担当者が夏休みに読んでおきたいマーケティング関連本5選!」の中から、『GILT(ギルト) 』のブックレビューをお届けします!

私はファッションに疎いので、GILTのことを全く知らなかったのですが、オビに書かれている文によると、「超一流ブランドを口説き、3年半でオンラインセール「ギルト」を10億ドル企業に育てた挑戦の日々」とあります。

10億ドル……!
(流通額ではなく、企業評価額とのこと)

著者のアレクシス・メイバンクとアレクサンドラ・ウィルキス・ウィルソン(冒頭の本のオビに写っている2人です)はハーバード大→ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)でMBAを取得した才媛です。だから実現できたんでしょ、と思ってしまいそうになります。

本書の翻訳者も「訳者あとがき」で同じようなことを書いています。

実は翻訳しながらも、ハーバード大学とハーバード・ビジネス・スクール出身の才媛(しかも美人)の二人がタッグを組んだからこそ成功できたのでしょ、と思っていた。(P.415)

でも、それだけじゃないんだよ、というのが本書の内容です。

メインテーマは、「仲間と一緒に事業を立ち上げ、成長させていくストーリー」ですが、当ブログではその中でも特にECに関連する部分に絞って、ご紹介したいと思います。

本の表紙


GILT(ギルト) ITとファッションで世界を変える私たちの起業ストーリー


アレクシス・メイバンク,アレクサンドラ・ウィルキス・ウィルソン 日経BP社 2013-04-18

「GILT」とはどんなサイト?

ファッション好きの方や、ECに関連する仕事に携わっている方はご存知の内容となってしまいますが、まずはGILTとは何か?について簡単にご紹介します。

GILTには様々な特徴がありますが、一言で述べるのであれば「オンライン上のアウトレットモール」と言えるのではないかと、私は感じています。

アウトレットモールといえば、

  • 消費者:憧れのブランド製品を格安で購入できるが、たいてい郊外にあるため移動等の手間がかかる
  • ブランド側:在庫調整ができるが、広大な敷地が必要な場合が多く、維持費もかかる

という特徴があります。

上記のメリットを担保しつつ、デメリットを解消したのが「GILT」です。

本書ではGILTが成功した理由として、アイデアの素晴らしさや、起業チームに優秀な人材が揃っていたことに加え、市場の動きを的確に捉えたから、と挙げられています。

私たちがギルト・グループの立ち上げ準備に負われていた2007年後半、eコマースは爆発的に拡大していた。
(中略)
ところが、ファッション業界の大半が、eコマースのこの勢いから取り残されていた。ファッション関連企業はどこも、旧態依然とした商売を変えようとせず、21世紀になったというのに、意地でもインターネットには背を向けているように見えた。
(中略)
2007年には高級ファッションの人気も大きく盛り上がった。
(中略)
しかしeコマースと高級ファッションブランドはそれぞれブームになっていたが、この二つが合体して市場を活性化するような動きはまだなかった。(P.109-112)

バイラル・マーケティングとフラッシュセールのポイント1+3

GILTでは、高級アパレル商材を中心に、貴金属や小物、インテリアなど幅広いラインナップを揃えており、各アイテムは業界に精通したバイヤーが責任をもってセレクトしたものを取り扱っています。

その上で「フラッシュセール」という、当時新しかったショッピングの形を提供し、それをバイラル・マーケティング(本書では「草の根キャンペーン」と紹介されています)で認知度を高めていきました。

実際にGILTがどのような施策を打ったのか、概要をご紹介します。

ブランド価値を傷つけず、過剰在庫を解消する

フラッシュセールはDeal of the dayとも呼ばれるe-コマースビジネスのモデルです。有名なものだとクーポン共同購入サービスのGrouponありますね。
GILTでは、メンバー登録をすると、毎日その日の目玉商品を紹介する案内メールが届き、最大78時間の期間限定で発注すると、あこがれのブランド商品でも、大幅にディスカントされた値段で購入することができる仕組みになっています。

また、通常のECサイト(Amazonや楽天など)では、ショッピングカートに入れた情報は基本的に保存されます。
しかし、GILTでは商品はショッピングカートに入れても、10分間しか取り置きができません。そのため購入に対する意思決定も早く決断する必要に迫られ、コンバージョン率の上昇にも繋がっています。

人気商品は販売開始直後に売り切れることもあり、ユーザーは実店舗のセールで買物を楽しんでいるような感覚を得ることができます。そのため、ユーザーはセール開始直後になるべく早くログインをする必要があり、目当て商品が見つかるまでなるべく早くWebサイトの中を回遊する必要があります。またサイト内の回遊を促すことによって、思わぬお気に入りアイテムと出会うこともあり、その場での衝動買いを促す効果があります。

一方、ブランド側の視点から見ると、一番のメリットは「過剰在庫をすばやく信頼がおける方法で処分できる(p.146)」という点です。

過剰在庫を抱える=現金化できない資産=回転資金を圧迫するうえに、倉庫の保管料もかかります。
在庫問題は避けて通れませんが、解消する方法にはそれぞれデメリットがあります。

  • 安売り店に卸す
    →ブランドイメージを損ねる「格下の一緒にラックにかけられ、最後はフロアに山積み」(P.152)
  • サンプルセール
    →店を数日休業し従業員をセール会場に派遣=コストがかかる
  • アウトレット店
    →出店費・人件費など費用大

これらの課題を解決するのがGILTだ、というのが創業者のアピールポイント。

ギルトで購入するほうが、サンプルセールやアウトレットショップでの買物より、顧客はより高級感を味わえるし、楽しいショッピング体験ができる、と強調した。(中略)チェーン店では、過剰生産されたデザイナーズブランドの商品が山積みされ、大幅な割引率で販売されている。ギルトのセールでは、そういった小売店とは違って、ブランドの高級感を損なわずに販売できる。(P.146)

GILT書影

バイラル・マーケティング3つのキーワード:稀少性・ファン化・報酬の付与

GILTの共同創業者で本書の著者でもあるアレクシスは、バイラル・マーケティングの威力や手法について、eBayでの経験を通じてよく知っていたそうです。そして、GILTはまさにバイラル・マーケティングにピッタリだとひらめき、実行に移していきます。

その際のキーワードが「稀少性・ファン化・報酬の付与」の3つです。

ブランド側はフラッシュセールによって、「この時間だけ、憧れのブランドが安く買える」という特別感(=稀少性)を与えつつ、在庫処分することができます。
しかしながら「最高級品の売り手は、インターネット上で大っぴらに割引販売することをいやがる(P.206)」側面もあります。

GILTは、会員制サービスを採用することによって、ユーザー・ブランド双方にメリットを与えることを実現しました。

  • ユーザー:会員からの招待が必要→特別感を得ることができる
  • ブランド:「パスワードで保護されたサイトならば、登録の壁に阻まれてグーグルで検索できない(P.147)」
    →自分たちの商品を大事に扱い、高級品としての位置づけをしっかり維持することができる。

Facebookもローンチ直後は学内の学生のみにサイト登録を許可する制限を加えたことで人気を博したのと同様に、GILTも初期には既存会員からの招待からでしか登録できなかったため、招待された人は稀少性を感じ、GILTに対するロイヤリティは上がります。

もともと米国女性たちは、掘り出し物の服や靴について話すのが大好きだそうで、「バーゲン情報を友人に教えるのは、単に情報をシェアするためではない。バーゲン情報は女にとってプライドの源泉なのだ(P.214)」とのこと。

女性たちに継続的にGILTのことを話題にしてもらうには、GILTが「自立して大きく育っていく(P.233)」こと=ファンになってもらうことが必要です。
米国全土にGILTを広めるためには、既存の(すでに成功している)地域のほかに、ターゲット地域を決めてイベントを開催し、有力紙・TV・ラジオ・ブログ等に取り上げてもらうことが大切とのこと。そのために彼女たちは綿密に作戦を練ったそうです(その作戦の1つが、創業者の2人、アレクシスとアレクサンドラを個人としてメディアに露出することです)

前述のとおり、女性たちはバーゲン情報を話すことが大好きです。

友人たちにバーゲン情報を教えてあげれば、さらに大きなご褒美をもらった気がした。これは「社会的報酬」の一つの要素となる。何かおもしろいこと、かっこいいことや役に立つ情報を仲間内で一番に知っていることが、女性の社会的ステータスになる。
(中略)
楽しいことは、友人だけでなく多くの人たちと共有したくなるものなのだ。だから私たちは、ギルトを知った顧客が友人たちにどんどん話したくなるはずだ、と期待していた。なぜなら、人に教えることでいわゆる「利他的報酬」が生じるからだ。(P.214-215)

上記のような心理的報酬を生じさせるのと同時に、金銭的なインセンティブ(最初の買物のとき、25ドルの買物券を渡す)も取り入れましたが、やはり重要なのは心理的・社会的報酬と認識していたそうです。

そもそも彼女たち自身が、GILTがターゲットとする顧客層だったため、「顧客の取り込みに経費も労力もあまりかけないで済んだ(P.216)」ことも、GILTのバイラル・マーケティング成功要因の1つだったと言えますが、本書を読むとバイラル・マーケティング成功に向けて彼女たちがどのような作戦を展開したのかを知ることができ、とても勉強になります


■編集後記■

いかがでしたでしょうか?
読み始める前は400ページ以上の分厚さを前に躊躇っていましたが、実際に読み始めるとグイグイと引きこまれ、あっという間に読了してしまいました!

本書はファッション好きな2人創業者の起業ストーリーという形をとっており、ECやマーケティングに特化してかかれた本ではありません。
今回のブックレビューでは、マーケティングに特化してご紹介しましたが、読み物としてもとても面白い一冊です。

ココではご紹介しませんでしたが、本書には随所にチェックリストが付いています。

  • そのリスクはよいリスクか?
  • ビジネスパートナーを決めるときに覚えておいてほしいこと
  • ベンチャーキャピタルで成功するプレゼン
  • トップクラスのエンジニアを採用し、採用者に満足して働いてもらうためのノウハウ
  • ビジネス規模が大きくなる中でどう企業文化を維持していくか

「全部読むのはタイヘンだ…」という方は、興味のあるチェックリストを探して、その前後から読んでみる、という読み方もアリかもしれませんよ!
ではまた!「この本のレビューを書いて欲しい」「こんなテーマを取り上げて欲しい」など、ご要望・ご質問はお気軽にどうぞ!

ちなみに、弊社ではバイラル・マーケティングとは少し異なるかもしれませんが、レビュー投稿サービスもご用意しています。ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください!

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本の表紙


GILT(ギルト) ITとファッションで世界を変える私たちの起業ストーリー


アレクシス・メイバンク,アレクサンドラ・ウィルキス・ウィルソン 日経BP社 2013-04-18

<目次>

まえがき
プロローグ
第1章 キャリアと友情―スタートアップまでの道
第2章 アイデアを練り上げる―ギルト・グループが形になるまで
第3章 ビジネスパートナーを選ぶ―相性のよさをどこで見極めるか
第4章 タイミングを計る―ビジネスを始めるには旬の時期がある
第5章 ネットワークをつくる―立ち上げ向けて準備する
第6章 eコマースの売場を改装する―ビジュアルによるブランディングの試み
第7章 資金調達はアートだ!―スタートアップにふさわしいベンチャーキャピタルを見つける
第8章 バイラル・マーケティングで顧客獲得―コストをかけない画期的手法
第9章 草の根作戦―インサイダー・マーケティングと高級感の維持
第10章 優秀な人材を集める―私たちはどのように有能なチームをつくり上げたか
第11章 危機をバネにする―在庫不足の問題とリーマン・ショックを克服する
第12章 私たちらしいリーダーシップのスタイル―ギルト・グループの拡大後も自分流を貫く
第13章 超成長の反動をどう乗り切るか?―疲労困憊、そしてギルト・ジャパンを立ち上げる
第14章 これからのギルト・グループ これからのファッションeコマース

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